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ソヨゴ書店 『青春漂流』×『感じる人びと』

dao-dao(ソヨゴ書店店主)

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いつからいつまでが青春期などと、青春を時間的に定義できるものではない。自分の生き方を模索している間が青春なのである。それは人によって短くもあれば、長くもある。
『青春漂流』より


政治・哲学から宇宙まで、知的欲求のおもむくままに多彩なノンフィクションを発表し続けたジャーナリスト・立花隆さんが、雑誌の連載で11人の若者たちと語り合った記録が『青春漂流』です。
若者といっても22歳から36歳まで幅広いですが、さまざまな職業のプロフェッショナル達との対話は今読んでもとても面白い。


20数年ぶりに『青春漂流』をパラパラと読み返してみたのですが、二宮敦人さんの『感じる人びと』と共通点がいくつかあることを発見しました。
たとえば立花さんが手づくりナイフ職人をたずねる場面。


「こうやって、ヤスリをかけて形をととのえていくんですがね、どうです、ちょっとやってみませんか」
といって、私にヤスリを手渡した。
「上面が平らになるまで削ってみてください。自分でこれで平らになったと思ったらやめていいです」 
 なんだ、そんな簡単なことかと思って、私は渡されたヤスリを手にして真鍮片を削りはじめた。
『青春漂流』より


そして、二宮敦人さんが「岩を削るプロ」・薄片技術者の平林さんをたずねる場面。


「では、早速やってみましょうか」
「えっ?」
平林さんは微笑み、そばの机から灰色の岩を掴み上げる。
「この石、花崗岩ですけれど、これを使いましょう。ちょっと説明しづらいところがあるから、実際にやってもらうのが一番だと思いまして」
さあ、後には引けなくなった。
『感じる人びと』より


そしてこの後、おふたりとも職人技の凄さに感嘆することになるのですが、『感じる人びと』の取材中、偶然にも昔読んだ本と似たような場面に遭遇していたとは。不思議なご縁を勝手に感じた次第です。
『青春漂流』には他にも若き日のソムリエ・田崎真也さんや猿まわし調教師・村崎太郎さんなどが登場します。人生に迷い、惑いながら自分の道を突き進む人たちの話は、時代を経ても古びることはありません。


たとえば、進学・就職という世間の風潮に抗って、未知の職業に挑んだオーク・ヴィレッジ塗師の稲本さん。

いまの社会では、みんなエリートになってもっぱら頭を働かすことで生活していくことを追求しているようだが、ほんとに人間が人間らしく生きられるのは、体を動かして働き、何か具体的なものを作り出すことにおいてではないか。そんな風に考えはじめたわけです。
『青春漂流』より


中学卒業後、精肉の世界に飛び込んだ精肉職人・森安さん。

結局、こういうものは体で覚えるほかはないんですわ。何頭も何頭もさばいていってはじめてわかる。私の場合、正確に勘定したことはないけれど、少なくとも一万頭はさばいているはずです。
『青春漂流』より


鷹匠として自給自足の生活をする松原さん。

大きくなるに従って、自分の生き方というものを考えたときに、自然の中で生きる以外ないという確信がゆるぎないものになっていったんですね。とにかく、ネクタイをしめたサラリーマンの生活は絶対いやだ、死ぬまでネクタイをしめないですむ生活をしようと思ったんです。
『青春漂流』より


どの方にも共通しているのは身体や感性が仕事と強く結びついているということ。これは『感じる人びと』の10名の方々とも通じるものがあります。
取材を終えて、立花氏は最後にこう振り返ります。


 不思議にみんな落ちこぼれだった。早くも中学で落ちこぼれた人もいれば、高校や大学までいってから落ちこぼれた人もいる。
(中略)
 落ちこぼれつつ、自分の情熱をかけるべき対象を追い求めていたのである。そして、それをいったん発見するや、彼らは落ちこぼれ人間から、とてつもない努力家に変身する。
『青春漂流』より


いったん世間のレールから外れるも、自分を信じて人生を切り拓いていく11人の人生を、ぜひ読んでみてください。『感じる人びと』に登場する10人の「五感の達人」のみなさんも、たくさん迷いながら人生を歩んできたのです。


ちょっと余談ですが、『青春漂流』と『感じる人びと』のさらなる共通点を少し。
『青春漂流』には「コック」「動物カメラマン」が、『感じる人びと』には「料理人」「写真家」が登場。
『青春漂流』に「ソムリエ」として取材に応じる田崎真也さんと『感じる人びと』の「香水クリエーター」渡辺裕太さんは、ともにフランスに単身旅立ち、もがきながら自分が進む道を見つけます。
そして『青春漂流』を締めくくるプロフェッショナルは「レコーディング・ミキサー」で『感じる人びと』の最後を飾るのは「サウンドエンジニア」。ともに「音」にまつわる話でした。
『青春漂流』はどちらかというと「人生」に焦点が当てられているのに対し、『感じる人びと』は「五感の使い方」を掘り下げつつ10人の方々の人生模様に迫った一冊。どちらも生き方と仕事を考えるうえで大きな刺激になると思います。ぜひご一読ください!


【今日の本】
『青春漂流』立花隆(講談社文庫)
『感じる人びと』二宮敦人(soyogo books)

(ソヨゴ書店 今日の本 その4 おわり)

dao-dao(ソヨゴ書店店主)(だお・だお)

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