川原繁人
1980年生まれ。慶應義塾大学言語文化研究所教授。 カリフォルニア大学言語学科名誉卒業生。 2007年、マサチューセッツ大学にて博士号(言語学)を取得。 ジョージア大学助教授、ラトガース大学助教授を経て帰国。 専門は音声学・音韻論・一般言語学。 『フリースタイル言語学』(大和書房)、『音声学者、娘とことばの不思議に飛び込む』(朝日出版社)等、著書多数。
<今回の質問>
「言葉って何がおもしろいの?」 4年生・らん
さあいよいよ授業が始まります。まずは、しっかり自己紹介することから始めました。理由はふたつあります。ひとつは、これから一緒に長い旅をする小学生に、自分がどんな人間かを最初に知ってもらうことが大事だと思ったからです。もうひとつの理由は、私はアメリカでの研究生活も長く、日本に帰ってきた今でもやはりあの時代の経験は宝だったと感じています。ですから、現在の若い人たちにも、もっともっと海外に目を向けてもらいたいと思っています。そこで、アメリカの大学にも興味を持ってもらえたら‥‥‥というほのかな希望を持っていたのです。この自己紹介が済んだ後、本エピソードの後半では、本授業の本題でもある「言語学の楽しさ」を伝える例をみんなで議論してみることにしました。
司会(北山ひと美校長) それでは皆さん、今日は特別授業で和光小学校出身の大先輩の川原繁人先生のことばの授業をおこないます。2時間半という長時間の特別授業なので、どれくらいの人が受けてくれるかなと思っていたのですが、こんなにたくさんの4年生、5年生、6年生が申し込んでくれて、そして質問もたくさん送ってくれました。私もその質問に目を通しましたが、とっても面白かったです。これらの質問は前もって川原先生に送っています。
最初に川原繁人先生をご紹介します。詳しいことは先生からもお話があると思いますが、今、慶應義塾大学というところで大学生を相手に教えている先生です。川原繁人先生にはお兄さんが2人いて、3人兄弟の全員が和光の幼稚園・小学校を出ています。私はお兄さんたちを幼稚園や小学校で担任をしたことがあるので、川原さんのことはとてもよく知っていました。繁人君が幼稚園の3歳児の花組にいたときは、私は隣のクラスの先生をしていました。
今日は川原先生が授業をしてくれるというので、川原先生の元担任の先生たちも来てくれていますので、ご紹介します。幼稚園で川原先生を担任した三苫先生です。
三苫 こんにちは。繁人くんの年少と年長の担任でした。
司会 そして小学校で担任をしてくれた小菅先生。
小菅 はい。小菅です、こんにちは。
司会 小菅先生は、川原先生の3,4年生の時の担任です。藤田康郎先生は、川原先生の5,6年生の時の担任の先生でした。それから、今日の授業はインターネット上の連載記事になる予定なので、日本印刷のカメラマンや編集者の人たちが来てくれています。たくさんの大人が見ていますが、いつものように、どんどんいろんな話をしたりして、楽しい授業を受けてほしいなと思います。
それでは川原先生、よろしくお願いします。
川原 北山先生、ありがとうございます。
じゃあ、みんなよろしくね。今日は、あんまり先生として来てないのよ。卒業生として帰ってきた気分なの。だから「川原先生、川原先生」と言われると、おかしな感じがします。特に自分の担任の先生の前で「川原先生」って言われると、すごくおかしな気分になります。今日は、みんなは私のことをあまり「先生」と思わなくていいからね。「大先輩」だなんても思わなくてもいい。「卒業生が皆さんとお話ししたいな」と思って来たという感じでやりたいなと思います。
まず、はじめましてから。はじめまして。
―― はじめまして!
川原 ああ、いいね。こうやって元気な反応が返ってくるもんね。最近の大学生は恥ずかしがり屋が多くて、なかなか授業中に反応してくれないんだよね。「質問ありますか?」って聞いても、黙っているの。それで、まったく質問がないのかなと思うと、授業が終わったあとに聞きに来たりするんだよね。それだったら授業中にちゃんと質問してほしい、といつも思っています。とにかく大学の授業は静かになりがちだから、こういう元気な反応は新鮮で嬉しいです。
私は1980年の早生まれなので、1991年度卒業。だから今の6年生のちょうど30歳上です。42歳です。
―― 42歳!
川原 年齢は隠してないからばらしても平気よ(笑) 幼稚園と小学校が和光です。幼稚園の時の写真があったので、今日持ってきました。北山先生や三苫先生も写っているでしょ。
―― おお。
川原 おおでしょう? これは私3歳だから約40年前ですよ。私は、和光幼稚園と小学校に通って、そのあと中学と高校は攻玉社学園というところへ行きました。ここも思い返せばとても良い学校でした。この時代の同級生たちは、今はいろんな分野で活躍していて、一緒に仕事したりしている仲間もいます。今日はあまり攻玉社についてはお話ししないんだけど、ひとつだけみんなにお話ししたいことがある。和光ってこうやって私が問いかけると、ちゃんと手を挙げて答えるじゃない? 私が小学生の時もそうだった。
でも、中学行ったら誰もやらないの。入学したばかりのときに、先生が「これ、わかる人」って言うと、私一人で「はーい」って手を挙げるんだけど、他の人は黙ってるから「あれ?」ってなったのをすごく覚えてる(笑)みんなには、中学生になってもそのあとも、こうやって元気で積極的に学ぶ姿勢を忘れないで欲しいな。
さて、高校を卒業したあと、大学は国際基督教大学、ICUというところに行きました。ICUのほうが和光に似ている気がするね。今でも、慶應のほかにICUでも授業を教えてるんだけど、ICUの学生の方がたくさん質問してくれるかな。全体的に議論するのが好きな雰囲気です。そして、ICUの3年生のときに交換留学をしました。交換留学っていうのは、アメリカの大学に行って勉強したら、その勉強したことをICUで勉強したことにしていいですよっていう制度です。それで、カリフォルニア大学に行きました。
1980年生まれ。慶應義塾大学言語文化研究所教授。 カリフォルニア大学言語学科名誉卒業生。 2007年、マサチューセッツ大学にて博士号(言語学)を取得。 ジョージア大学助教授、ラトガース大学助教授を経て帰国。 専門は音声学・音韻論・一般言語学。 『フリースタイル言語学』(大和書房)、『音声学者、娘とことばの不思議に飛び込む』(朝日出版社)等、著書多数。