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美しい本のはなし 日々の窓

Illustration 塩川 いづみ

 もう何冊か紹介しよう。

 マルセル・シュオブ『架空の伝記 小説全集第三巻』大濱甫訳、南柯書局、1980
 知っている本のなかでもっとも内容に即した装丁と思うものをあげろといわれたら、自分は南柯書局のこの小説全集をあげるかもしれない。比類なきシュオブ。

Kavan, Anna. My Soul in China. London : Peter Owen Limited, 1975.
Kavan, Anna. I am Lazarus. London : Jonathan Cape, 1945.
Kavan, Anna. A Bright Green Field. London : Peter Owen Limited, 1958.

 アンナ・カヴァンの短篇集をいま訳出中であるが、遅々として進んでいない。

久生十蘭『昆虫図 久生十蘭傑作選Ⅳ』教養文庫、1976年
久生十蘭『無月物語 久生十蘭傑作選Ⅴ』教養文庫、1977年

 現代は文学とエンターテインメントの差はかなり小さくなっているが、その先駆けのような作家。鬼神のごとく文章に巧みだった。サンリオ文庫も伝説の文庫であるが、この教養文庫もまた伝説といえるだろう。不思議な本がずいぶん出ていた。

エドムント・フッサール『内的時間意識の現象学』立松弘孝訳、みすず書房、1967年
 大工のアルバイトをしているときに読んだ。昼休みに寝転んで青空を背景に読んだ。いつか読み返したいと思うのだが時間はあるのだろうか。

 河出文庫の足穂の『ヰタ マキニカリスⅡ』の表紙はメタリックで美しい。文庫のデザイン中屈指ではないか。
 足穂の中心にあるものは軽く形もない。軽く形のないものがこれほど現代的で力強いことに希望をいだく。少年少女よ足穂を読もう。

 前掲の『移動図書館の子供たち』の表紙はひじょうにチャーミングである。

Brennan, Maeve.The Long-Winded Lady. Dublin : Stinging Fly Press,2017.
Brennan, Maeve.The Long-Winded Lady. Hudson : Bas Bleu, 2016.

 メーヴ・ブレナンは『ニューヨーカー』誌の編集者、コラムニスト、優れた短篇小説作家。晩年にホームレスになった。現在短篇集を訳出中。

工藤正市『青森 1950-1962 工藤正市写真集』みすず書房、2021年
 木村伊兵衛も植田正治もすばらしい。しかしインディーの好きな筆者としては工藤正市の写真にこそ心を動かされる。

西崎憲(にしざき けん)

1955年青森県生まれ。作家、翻訳家、音楽レーベル主宰。 日本翻訳大賞の創設、文学ムック「たべるのがおそい」の編集長を務めるなど、幅広い分野で活躍。2002年、『世界の果ての庭』で第14回日本ファンタジーノベル大賞を受賞。著書に『ヘディングはおもに頭で』『未知の鳥類がやってくるまで』『全ロック史』、訳書に『郵便局と蛇』コッパード、『ヘミングウェイ短篇集』、『青と緑 ヴァージニア・ウルフ短篇集』、『あの人たちが本を焼いた日 ジーン・リース短篇集』などがある。

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