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soyogo 文フリ雑記帳 第3回 素晴らしき哉、人生!

dao-dao(ソヨゴ編集部)

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フランク・キャプラといえば、ハリウッド黄金期を代表する映画監督。「或る夜の出来事」「オペラハット」「スミス都へ行く」などの数々の代表作を生み出した名匠です。

そのキャプラが戦後最初に撮影した作品が「素晴らしき哉、人生!」(1946年)です。

ジェームズ・スチュアート演じる主人公ジョージ・ベイリーは、世界中を旅したいという夢を持ちつつも、実現できないまま日々の生活を過ごしています。人生に次々と難題がふりかかりながらも、結婚して4人の子供にも恵まれ、幸せな人生を歩みます。
1945年のクリスマスイブ、ジョージが経営する会社の金が紛失してしまい、絶望にかられたジョージは投身自殺を試みますが、そこにクラレンスという名の天使が降りてきます。
「自分はいなくなった方がみんな幸せだ」というジョージに対し、クラレンスは「ジョージが存在しない世界」を提示して、ふたりでその世界をさ迷い歩くのですが・・・

この作品は、アカデミー賞で5部門にノミネートされますが受賞は逃しました。興行的には惨敗だったようで、キャプラは自信を喪失し、その後、あまり作品を撮らなくなったそうです。

この映画が脚光を浴び始めたのは1970年代あたりから。60年代に著作権が切れたあと、クリスマスシーズンにテレビで放映されるようになると、家族向けの定番映画となったようです。多くの人々の胸を打ち、作品としての評価も高まりはじめ、名作映画のひとつとして現代まで語り継がれています。

この作品に原作があることは、あまり知られていないかもしれません。
そもそも、短い作品ですし、翻訳もなかなか見当たりません。

作家の名前はフィリップ・ヴァン・ドーレン・スターン。編集者で歴史家でもあるスターンは、生涯に40冊ほどの著作を著しています。

1938年に小説の着想を得たスターンは翌年から物語を書き始め、1943年に「The Greatest Gift」と題したこの短編小説を完成させます。当初出版社が見つからず、21ページの小冊子200部を自作して、友人たちにクリスマスプレゼントとして配ったそうです。
この物語が映画プロデューサーの目に留まり、映画化の話が進行。フランク・キャプラの制作会社がこの作品の権利を取得して、撮影が始まったそうです。

小説は20ページほどの物語ということもあり、映画と比べるととてもシンプルですが、「自殺しようとした男が天使と出会い、自分のいない世界を目撃することで生きる勇気が湧いて、元の世界に戻ってくる」という部分は共通しています。

映画版のラストはクリスマスということもあってかなりきらびやかな舞台が用意されていますが、原作の演出はもっとミニマル。でも、このさらっとした感じが、個人的にはとても好きです。
ご興味を持たれた方は、アマゾンプライムなどで映画は簡単に見られるので、ぜひ原作も読んで違いを確かめてみるのも面白いと思います!

さて、この小説を文フリに出すにあたり、「21ページ、200部の自費出版で配った」というエピソードにちなんで、それに近い仕様で200部作ってみることにしました。

クリスマスっぽく、金の箔押しの表紙にしたかったのですが、さすがにお金がかかるので金色印刷で乗り切ることに。
せっかくなので、表紙を赤・緑のクリスマスカラー2種類で作ってみようということになりましたが、テスト印刷を始めて、問題が発生。
なぜか濃い緑の用紙が印刷機でエラーを起こし、金色印刷ができないのです。
薄い緑にすると金色が見えず、たまたま在庫にあった白い紙に刷ってみると、意外ときれいに印刷できました。

クリスマスカラーといいながら、赤・緑ではなく赤・白となったのですが、まあ、サンタクロースカラーということでセーフかな、と考えて2種類制作。これはイベント当日の話になりますが、この白表紙、全然人気がなくて、みなさん赤表紙を買われていきます。つまり白を作る必要なんてなかったわけですが、2種類作るということになぜか取り憑かれていて、正常な判断ができていませんでした。これは大きな反省点です。

さて、こちらも印刷スケジュールはかなりぎりぎりに。

製本見本に校正ゲラを重ねて本のイメージをしていたのですが、
ノド(本の内側)部分に思ったほど余白が少なく、

ちょっと読みづらいかな、と考え、
急きょ1行減らすことに。明日から印刷というのにこんな修正を始めてしまって、担当社員には本当に迷惑をかけてしまいましたが、何とか進めることができました。

1行減らすと、こんな感じ。

これでOK! ということで、印刷に進めて、なんとか発送日ぎりぎりに製本が完成しました。

大急ぎで書籍やトートバッグなど段ボールに詰め込んで、ヤマト便で発送!
無料配布もたくさんあるので段ボール5箱にもなってしまいまいた。
「さすがに多すぎるのでは」と思いつつ、勢いで送ってしまったのですが、
これも大きな反省点で、次回は2箱くらいに収めたいと思います。
とにかく準備はなんとか間に合わせました。
あとは当日を迎えるのみ!

(第3回 おわり)

dao-dao(ソヨゴ編集部)(だお・だお)

日本印刷社員。soyogoとhon amiという2つの新ブランドを立ち上げて、事業を軌道に乗せるべく日々試行錯誤を続けながら、土日は子守りに奮闘中。

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