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飛ばない小説家 side story 第5回 時を超える場所

dao-dao(ソヨゴ編集部)

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博物館に入館して、バックヤードにご案内していただいたのは学芸員の花木知子さん。

学芸員と一口に言っても、歴史、民俗、自然等々といった専門分野があり、この日は花木さん、佐藤智敬さん、中村武史さんの3人の学芸員さんが丁寧に取材に応じてくださいました。

博物館ならではの仕事のお話をいろいろとお聞きしながら、印象に残ったことのひとつは「時代ごとに『昔』の基準が変わる」というお話。当たり前のことではあるのですが、改めて考えてみるとなかなか面白いテーマです。筆者のように40年以上生きていると時の流れについて考える瞬間がよくあるため、そのことも影響したのかもしれませんが、時間について思いをはせる場所としての博物館、というふうに考えると個人的にはかなりしっくりとくるものがありました。

体験学習室でお話をうかがったあとは、博物館内を順番にご案内していただきました。

時を超えるという楽しみ方ができる展示の一つが、江戸時代末の宿場の街並と府中御殿跡地の様子が再現された模型です。古地図というのも現代と照らし合わせると楽しそうですが、江戸時代の様子が模型として目の前に現れると、当時の人々の息吹を感じようとする想像力が働いてきて、しばらく見入ってしまいました。今の自分たちの生活も、やがてこういう風に見られることがあるのだろうかと、やはり時の流れに思いをはせてしまいます。

3時間以上にもわたって館内をご案内していただき、バックヤードにある手作りパネルなど貴重なアイテムの数々を拝見することもできて、まさに大人の社会科見学といった趣でとても楽しい時間でした。

取材終了後、せっかくなので広大な敷地を歩いてみることに。

明治から昭和初期の民家や庁舎などが復元・移築されており、貴重な文化遺産をじっくりと楽しむことができます。とにかく広いので方向を見失いそうになりますが、水車小屋があったり、「水遊びの池」では子どもたちが歓声を上げていたりと、何とも幸せな空気に包まれた空間です。 しばらく歩いていると、目の前にティラノサウルスが!

まさか恐竜時代にまで時代をさかのぼることができるとは思いませんでしたが、そのお隣には「白亜紀中期から後期(約7000万年前)の樹木と推測される珪化木」も設置されており、この場所は訪問者を太古の時代へと連れて行ってくれるようです。ちなみにティラノサウルスは国立科学博物館からの寄贈とのこと。

さて、小説にも登場した「まいまいず井戸」は、こんな場所です。

ちょっと不思議な形で、乗代さんがこの場所を眺めながら、「小説の舞台にできそうだな」とつぶやきます。実際に第2話に登場する場所なので、石句と森一はここで会話していたのか、と想像しながらお読みいただくのも楽しいかと思います。

別日には、館長の深澤靖幸さんへの取材もあったのですが、残念ながら筆者が家庭の都合で急きょ参加することができず、博物館のサイドストーリーはこの回でおしまいとなります。(乗代さんにはご迷惑をおかけいたしました)

しかし、館長じきじきにお話を伺うことも実現し、2日間にわたって乗代さんはかなり充実した時間を過ごすことができたようで、筆者としては安心した次第です。

現在、府中市郷土の森博物館は大規模な改修工事中で、令和6年7月20日に全館がリフレッシュオープンされるとのことです。

不思議な夢のお話となっている第2話「府中の渦のときのなか」をお読みいただき、府中においでの際は、森一の夢をたどるように郷土の森博物館もお楽しみいただければと思います!

そして、第3話以降は書籍で読むことができるように、現在準備中です!

dao-dao(ソヨゴ編集部)(だお-だお)

日本印刷社員。soyogoとhon amiという2つの新ブランドを立ち上げて、事業を軌道に乗せるべく日々試行錯誤を続けながら、土日は子守りに奮闘中。

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